ドイツも古い町や建物の保存には手をかけていて、ローテンブルダだのケルンだのあちこちに行ってみたが、大真面目で几帳面なドイツ人らしいやり方をしていた。五百年経っている家々だというのに、全部新築同然のピッカピカになっている。絵を描く気分にならない。「こりゃ絵葉書にするにはよかろうが、どうもな」と思った。そこでスケッチしてみたが、ピッカピカにはせず、古そうな味付けにした。その後にイタリアに廻った。古代の遺跡が破壊されたままの姿で保存されていて、ホッとした。古代の遺跡を復元すること自体が不可能だからこうするよりないが、もしもドイツにこれがあったらやるかもしれぬ。やっぱりイタリアは芸術立国してきただけのことはある。この方が絵になると思ったに違いない。イタリア人は適当なところで事を納める習性があって、イタリア以外のヨーロッパの人達からは「イタリア人は楽天的なところがあって、几帳面とは言えない。イタリア以外のヨーロッパの人達からは「イタリア人にはお調子もんが多い」と思われているが、美として物を見る目があるということではなかろうか。このことは意外に根が深いようだ。スペイン人も田舎臭いがイタリア人に近い感受性を持っていることを思うと、どうも事の根源にはキリスト教対イスラム教の違いが伏線になっているようだ。